現在、日本には約20万人の留学生が在留しています。その内日本語学校に在学している留学生は約6万人と全体の25%を占めています。
そんな留学生ですが、日本留学を希望したらすぐに日本へ入国、日本語学校に入学出来る訳ではありません。日本語学校に入学するまでに、いくつかのステップを通過した後、日本語学校に入学する事が出来ます。
しかし、日本語学校に入学した留学生の一部が詐欺事件、殺人事件、不法就労、オーバーステイ等により、昨今のニュースや新聞雑誌で取り上げられてしまう事が増えています。
このままでは、留学生に対するイメージ悪化、風評被害にも繋がってしまい、日本語学校の存在意義すら揺るがしかねません。
日本語学校で勤めている人間にとっては非常に悲しみを覚えると同時に、同じ日本語学校業界に勤める人間として責任を感じる毎日です。
ではどうすれば良いのか。日本語学校に出来る事で最も重要な事は、適切な応募者選考を実施する事です。
本記事では、日本語学校が応募者受付をしてから入学までのステップと合わせて適切な応募者選考の必要性について解説します。
留学生来日までのプロセス
最近、日本全国留学生が増えてきてるよね。そもそも留学生って、すぐ日本語学校に入れるの??
いいや、そんな事はないよ。
日本語学校に入学するまでに幾つかのStepをクリアしなければならないんだ。
簡単にすぐ入学出来たら、誰でも日本に来れてしまうから、幾つかのStepがあるんだよね?
その通り!今回のテーマは留学生の応募者選考だけど、まずは留学生が来日するまでのプロセスを見てみよう。
Step1:希望の日本語学校を探す
私たち日本人が海外に留学する時も、まず最初に現地の学校を探しますよね。留学生も同様に、通学先の高校や大学、インターネットや現地の留学エージェントを通じて、自分が行きたい日本語学校を探します。
Step2:日本語学校に応募
次に希望する日本語学校が見つかった留学生は、希望の日本語学校に応募します。各日本語学校には、それぞれの応募条件があり、応募条件を満たした方のみ応募が出来ます。
Step3:応募者選考試験を受ける
各日本語学校が実施する応募者選考試験を受験し、合格した希望者は次のStepに進みます。試験内容は学校によって様々ですが、具体的には以下の様な試験が実施されている事が多いです。
- 日本語面接試験(現地面接又はオンライン)
- 日本語筆記試験(現地で試験又はオンライン)
- 希望者事前スクリーニング•カウンセリング(現地又はオンライン)
Step4:在留資格認定証明書申請手続き
応募者選考試験に合格しても入学が確約される訳ではありません。日本人とは違い、外国人が日本に長期滞在するには日本在留許可を得なければなりません。
在留許可を得る為、日本語学校が所属する地域の地方入国管理局(以下入管)に対し、期日までに在留資格認定証明書申請をします。
入管への申請につき、応募者は指定された必要書類を日本語学校に提出しなければなりません。必要書類は多岐に渡りますが、
ここで入管による各提出書類のスクリーニングが行われます。当然、疑わしい書類や内容が有れば、在留許可は出ません。
Step5: 在留資格認定証明書取得と学費支払い
入管によるスクリーニングを通過すると、在留資格認定証明書が発行されます。発行された後、日本語学校に学費等の初年度納入金を支払います。
Step6: 現地日本大使館ビザ査証
在留資格認定証明書等の必要書類を携えて、現地の日本大使館にビザ査証手続きを行います。ここでも提出書類のスクリーニング、大使館によっては日本語面接試験を実施しています。
Step7: 日本行きのビザ(留学)を取得
無事に日本大使館でのビザ査証許可が下りたら、全てのStepが完了します。様々なStepを経て、約5ヶ月前後の期間を要した後、日本に来日し、日本語学校に入学しているのです。
留学希望者へ実施するスクリーニング
基本的に全ての留学希望者に対して、3段階のスクリーニングが実施されます。
第二段階の入国管理局によるスクリーニングは、書類審査のみになる為、希望者と直接のスクリーニングが出来るのは、第一、第三段階のみとなります。
- 第一段階:日本語学校
経費支弁能力確認
留学費用を負担出来る財力が有るか
適正検査
性格、風貌、履歴、修学理由確認等
日本語力試験
150時間の学習完了レベルに到達しているかを確認
- 第二段階:入国管理局(法務省)
提出された書類の整合性を確認
偽造書類、情報の不一致が有れば在留不許可にする
- 第三段階:日本大使館(外務省)
入国管理局に提出した書類とビザ査証時に提出した書類の整合性を確認
日本語能力確認
150時間の学習完了レベルに到達しているかを確認
日本語学校の応募選考が重要な理由
残念ながら経営利益を優先し、応募選考を実施しない、又は適正な応募選考を実施しない日本語学校が一定数あります(法務省告示基準、告示校抹消の対象)。
本来、全ての日本語学校が適切な日本語面接試験と適正検査を実施しなければなりません。希望者が本当に日本留学をしたいのか、本当に日本語を勉強する気があるのかをある程度確認する事ができるからです。
日本語の勉強をする気が無ければ、日本語面接試験で不合格になります。不合格になる方の大半は、勉強不足(全く勉強した事が身に付いてない)又はカンニングです。
この様な希望者は、入学後トラブルを起こしたり(喧嘩や酒酔い、軽犯罪等)学校よりもアルバイトに力を入れてしまう傾向が高い事から、応募選考の段階で切り捨てなければなりません。
しかし、経営利益を優先して応募選考を疎かにしてしまうと、学習意欲の低い、トラブルメーカーになりやすい人間を入国、入学させてしまうことになります。最悪の場合、犯罪を起こし、日本国の治安悪化に繋がってしまいます。
適切なスクリーニングをしなければ、犯罪予備軍の入国を許してしまう可能性がある事を日本語学校職員、経営者は今一度認識しなければなりません。
適切な応募選考実施に向けて
日本語学校における適切な選考方法について以下に記載しています。
適切な応募者選考を実施し、真に日本語を学びたい留学生を呼び込み、世界と日本の架け橋になれる人財を輩出する事こそが日本語学校に求められる事だと断言出来ます。
- 学校紹介資料、日本生活、生活費資料、募集要項の毎期配布と内容説明
- 経費支弁能力の確認。事前調査表にて年収や職業を確認した後、疑義が生じれば下記5を実施
- 日本語テスト(面接·筆記)を実施
- 個人面談(テストと一緒に実施)
- 抜き打ち調査を実施。提出された残高証明書や役所関係書類の内容に対して、発行元に抜き打ちで内容ね整合性を確認。
- 上記1,2を可能な限り母国語で、エージェントや希望者に正しく伝える(日本語が上手なエージェントでも、理解が浅い、勘違いが生じる為)
最後に
如何でしたか。日本語学校における応募者選考の重要性が理解頂けたのではないでしょうか。
今、日本語学校で働いている方には戒めとして、これから日本語学校で働く方には事前知識として、本記事がお役に立てる事を請願しております。
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