COE許可率と日本語学校の学籍者管理体制について

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日本語学校

在留資格認定証明書(以下、COE)が交付されなければ、そもそも留学生は日本に入国出来ませんし、入学も出来ません。無論、留学を希望した方全員に交付される事もありません。

入国管理局の厳格審査対象国で、留学生数の多いネパール、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマー、ウズベキスタン、モンゴル等の許可率は、地域や申請時期により、許可率が10%以下になる事もあります。

日本語学校の職員は、上述の国々の許可率が低い時には〇〇入管の審査は厳しいと本音を漏らしたくなります。

ただ、10年間日本語学校職員として、留学生募集、COE申請業務に携わってきて分かった事は、COEの許可率に日本語学校の学籍者管理体制が大きく関わっているという事です。

今回はCOE許可率と日本語学校の学生管理体制との関係性について、解説したいと思います。

問題在籍者が多い日本語学校が増えると

問題在籍者とは、主に以下を指します。

  • 出席率が80%以下で、欠席が多い
  • 毎月出席率が悪く、入管の出席不良者報告の常連である
  • オーバーワークをしている。1週間28時間以上働いている。
  • 授業態度が悪く、やる気がない

例えば出席率80%以下の多い学校があるとします。そうすると、入国管理局は該当校に対し、以下の様な認識を持ちます。

  • 勉学意欲の低い学生ばかり受け入れている?
  • 適切な応募選考がされていないのではないか?
  • 学生管理体制、運営基盤が脆弱なのではないか?

入管にこの様な認識をされてしまうと、日本語学校が適切な受け入れ体制、運営体制が整っていないにも関わらず、収益の為に学生を受け入れ、不適切な運営をしているとの烙印を押されます。

もし、皆さんが入管の担当者で、この様な日本語学校が増えている現状を目の当たりにしたら、どうしますか?

私が入管の担当者なら、COEの審査をさらに厳格化し、本当に勉学意欲のある学生なのか、アルバイトばかりする経費支弁能力が脆弱な留学生ではないのかを厳しく審査します。

不法滞在者、不法就労者が出ている

これは日本語学校の在籍管理において最悪のケースです。不法就労、不法滞在は法律違反であり犯罪です。

無論、成績も出席率も良かった学生が急に失踪してしまう事もありますし、私自身も経験しています。

また、不法就労や不法滞在になる留学生には共通点があります。以下は私自身の10年間のキャリアで経験した実体験をベースを基に記載しています。

  • 刺青が入っていたり、悪ぶっていたりと全体的に風貌が悪い(チャラい)
  • 急に見た目や雰囲気が変わる
  • 日本語を勉強する気がない
  • 入国した日の残金が1万円以下で、日本にいる友人や親戚からお金を貰う人がいない
  • 住んでいる所がコロコロ変わる

学校から不法滞在、不法就労者が出ているという事は、入管から在籍管理が出来ていない、応募者選考が出来ていないと判断されてしまいます。

上述しましたが、この様な日本語学校があったらどう思いますか?自分自身が入管職員だったらどうするかは明白ですよね。

不適切な運営をしている日本語学校が多いエリアがあったら…

上述の様な学校が増えているエリアがあったらどうでしょうか?よく話題に上がる東京入管管轄エリアのCOE許可率で考えてみましょう。

東京入管管轄の日本語学校に5年以上勤務している方なら覚えていると思います。私も決して忘れる事はありません。

東京入管管轄の COE許可率が一気に下がった(2019年)

2019年4月、東京入管管轄のCOE許可率は一気に下がりました。主に審査厳格化対象国のスリランカ、バングラデシュ、ミャンマーと言った国々の許可率は、例年60-70%でしたが、一気に10%以下になりました。

さらに2019年7月には審査厳格化対象国の許可率はほぼ0%となり、全くCOEが許可されない状況になってしまいました。

当時、予定していた数の学生が入って来ず、経営陣からは散々叱責されました。送り出し機関からは、COEが不許可になった事を散々文句を言われ、何度も仕事を辞めたいと思えるくらい辛い経験でした。

東京入管管轄のCOE許可率が下がった理由がある

結論から言うと、2019年当時、東京入管管轄の多くの日本語学校が在籍者管理を疎かにし、増収増員に走った挙句、適切な応募選考をせずに留学生をたくさん入れてしまった事が全ての原因です。

多くの日本語学校が、運営体制が未整備、未成熟にも関わらず、留学生を入れ過ぎたが故に、在籍管理が疎かになりました。

適切な応募者選考を怠れば、悪い学生が入ってきます。そして、不法滞在者、不法就労者、難民ビザ申請者(特定活動ビザ)をたくさん出してしまいました。

上述した通り、不法滞在者、不法就労者を多く出せば、入管からは不適切な在籍管理、運営をしているとの烙印が押されます。

そして、その様な学校が増えてしまったエリア、それが東京入管管轄だったのです。だからこそ、東京入管は2019年にCOE許可率を一気に下げたのです。

COEの不許可理由にも理由がある

結論から言うと、提出した経費支弁能力証明書する書類に信憑性が持てなくなった事が原因です。

不法就労、不法滞在をする大半の理由は、お金が無いです。でも、おかしいですよね。彼らがCOE申請書類として提出した銀行書類、年収証明書にはお金が有ると書いてあります。

お金があると書類で証明書しているのに、日本に入国したらお金が無い、学費が払えないと言うのはおかしいです。そして、お金が無いから学校に行けないを理由に、難民ビザを申請してしまうのです。

  • 銀行書類(残高証明書又は明細書•通帳)に疑義あり
  • 年収証明書に疑義あり
  • 持続的な経費支弁能力に欠ける

主な不許可理由は上記3つになりますが、不許可にされた留学希望者の中には本当にお金がある子もいました。その様な希望者の書類も疑義有りとされてしまう程、提出書類が信用されなくなっていたのです。

在籍管理を怠り、増収増益に走れば失う物は大きい

入管は日本語教育機関の告示基準に従い、日本語学校が適切な運営をしているのかを常に監視しています。抜き打ちで学校査察に来る事もあります。

しかし、この様に入管が監視の目を光らせていなければどうなるでしょうか。日本語学校によっては、好き放題利益追求に走り、何人不法滞在者、不法就労者を出しても気にしない学校も出てくるでしょう。

だからこそ、入管があります。だからこそ、私たち日本語学校の職員は告示基準に従い、適切な応募者選考、学籍管理、運営が求められているのです。

適切な学籍管理が出来なければ、COE許可率も下がります。許可率が下がれば収益も下がり、行き着く先は廃業や売却となります。失う物はあまりに大きいのです。

最後に

COE許可率と日本語学校の学籍者管理体制について、その関係性が理解頂けたと思います。

私自身長年ずっと疑問に思っていたCOE許可率が急に下がる事象について、キャリアを積むにつれて理解出来るようになりました。

近年は、適正校認定にもクラス分けがされるようになり、クラスIに分類されると、国籍関係なく提出書類がCOE申請書5枚のみとなりました(追加書類の可能性は有)。

ただし、無論クラスIに分類されるには、以下の条件を満たさなければなりません。

  • 問題在籍率が3年間継続して1パーセント以下であること(当該選定を含む。)。ただし、在籍者が99人以下の場合は、問題在籍者が1人以下であること。

参照:出入国在籍管理局HPより

この適正校のクラス分け導入は、入管が求めている告示基準に則り、適切な運営がされている日本語学校に対しては、ご褒美があるよという事を暗示しています。

適正校クラスIになれれば、書類も大幅に簡素化されますし、COE許可率も安定し、収益も適切に上げる事が出来ます。これこそ、日本語学校が目指すべき運営体制、長期計画であると言えます。

最後に、本記事が特に日本語学校の経営陣、管理職の方々の所まで届き、より良い日本語学校運営に役立てて貰えたらと思います。

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