皆さん、こんにちは。
コロナ収束後、毎年たくさんの留学生が日本語学校に入学しています。日本語学校も定員が充足され経営も安定してきており、定員増を計画している学校も多い様子です。
日本語学校の職員として、留学生がたくさん来てくれるのは嬉しい反面、気をつけなければならない事が出てきます。
それは、在籍不良者の対応です。
在籍不良者の中には、犯罪に手を染めたり、不法就労に走ったり、急に失踪したりと、不測の事態に繋がりかねない学生が出てくる可能性があるのです。
そこで今回は、もし自分の学校の在学生の中から、失踪者が出てしまった時の対応について、学校が取るべき対応と注意点について解説します。
失踪前の傾向について
失踪(行方不明)となる在籍不良者には、共通の特徴と傾向があります。具体的には以下の通りです。この傾向がある学生は日頃から注意しながら、サポートをしましょう。
- 欠席が7日以上続いている
- 授業中にずっと寝ている(アルバイトばかりしている様子)
- 出席率が下がり始めた頃、急に容姿が変わる(金髪にしたり、鼻ピアスをつけたり、髪型を変えたり)
- 学校からの連絡に出なくなる
- 出席率が80%前後まで落ちてくる
- お金が無くて学費を滞納している
上記は私自身が10年間で経験してきた経験から列挙しました。特にお金が無い、出席率が悪い学生が疾走に繋がる傾向が高いです。
本当に失踪したのか?全ての連絡手段をあたる
学生本人と連絡が1週間以上取れない場合、それだけで失踪と決めつけてはいけません。本人と連絡が1週間以上取れない場合、以下の手段で連絡を試みてください。
- 経費支弁者に連絡
- ルームメイトや仲の良いクラスメイトに確認
- アルバイト先に確認
- 自宅訪問、友人宅訪問
特にお金の無い学生は、アルバイトを続けている可能性があります。アルバイト先に事情を伝えて、シフトに入る日に合わせて、アルバイト先を訪問しましょう。
自宅訪問に居ない場合でも、仲の良い友人宅に身を寄せている事もありますので、該当学生の友人宅も訪問してみましょう。同じ仲間内で匿っている事もよくあります。
失踪者=行方不明者として扱う
前置きしますが、在学生から失踪者が出る事はあってはならない事です。何故なら日本滞在中における在学生の保護者は、日本語学校になるからです。親と子どもの関係とも言えます。
当然、親は子どもが失踪(行方不明)になったら警察に捜索願いをお願いします。日本語学校も同様に、最寄りの警察署で捜索願いを出しましょう。
警察に捜査願いを出す時の注意点
警察署に捜査願いを出すと、警察の方々が全力を上げて失踪者を捜査をしてくれます。しかし、捜索願いを出した後、学生が見つかったら引き取りに行かなければなりません。
学生が見つかった場合、その地区の警察署に勾留される事が一般的です。その勾留された警察署が遠方になる可能性もあります。
学生が失踪して日本中を逃げ回っていたが為、見つかる場所が沖縄や北海道の可能性もあります。その際は如何なる場所であろうと、保護者(日本語学校)が引き取りにいきます。
捜査願いを出した後、見つかったら日本全国どこでも引き取りに向かうことを想定し、学校内で共有しましょう。事態が発生する前に把握する事でスムーズに進める事が出来ます。
警察署からの連絡は夜間でも対応できるようにする
警察官は夜間も業務されています。緊急な事情(例:失踪者が見つかったが、犯罪を犯してしまった)が発生すれば、警察署から連絡がきます。
この緊急対応は役職者(校長、事務長、教務主任等)が担う事が望ましいです。案件によっては、急な判断をせざるを得ない場合もある為、役職者が担う様にしましょう。
全ての手段と対応を尽くしても見つからなかった場合
上記の対応を尽くしても、失踪者が見つからなかった場合は、以下の手順で進めていきます。
学校内での処遇決定
各日本語学校には学則があります。その学則内に懲戒処分を記載しているのが一般的です。失踪者や不法就労は除籍とすると記載をしている学校もあります。
学則に従い、以下の様にして処遇を決定しましょう。通常、失踪や不法就労、犯罪を犯した学生の処遇は除籍扱いになります。退学としないよう、注意してくだしい。
「学則第〇〇条の〇項に該当するとし、除籍処分とする」
この様に処遇を決定した事も報告書や議事録にまとめ、大切に保管しましょう。
入管届出報告を行う
上記の処遇決定後、入管に告示基準第1条第1項第38号(退学した生徒について)の届出を行います。
入管の方もよく仰いますが、38号報告と略称で呼ばれています。退学者(除籍含む)が出たら38号報告と覚えておくて良いでしょう。
届出報告は、入管電子システムから又は郵送にて行いましょう。
失踪発生から処遇決定までの報告書を作成する
失踪発生から最終的な処理までの記録は必ずデータ又は紙媒体で作成し、大切に保管してください。また、失踪者に限らず、在学生と面談や指導等の記録は必ず作成しましょう。
入管の調査や質問時に発生から処分までの記録が必要
入管は定期的な確認に加え、実態調査(査察)に来ることがあります。私自身も実態調査を経験しており、失踪者の面談記録や処遇までのプロセスが分かる書類の提出を求められた事があります。
記録が無ければ入管からの確認にも正確に対応出来ない事に加え、各種記録の保管を入管から義務付けられているにも関わらず履行されていないとなれば、学校運営に問題有りとされてしまいます。
学校運営に問題有りと判断されると、状況が改善されなければ最悪の場合廃校(告示第一表からの抹消)にされてしまいますので、留意してください。
最後に
今回は、在学生の中から失踪者が出てしまった時の対応についてご紹介しました。
基本的な理解として、失踪者は出してはいけません。失踪した学生が犯罪に手を染めたり、テロ行為に繋がる可能性すら有り、国の治安をゆ揺るがしかねないからです。
また、失踪者が出たという事は、その学校の応募者選考が不適切であった事となり、これが続くと入管から実態調査が入り、改善されなければ廃校とされてしまいます。
応募者選考の大切さについては、別記事で紹介していますので、下記のリンクよりご覧頂けます。学校から失踪者を出さない為には、適切な応募者選考が不可欠です。
最後に、本記事が日本語学校職員の皆様のお役に立てる事を願っています。