みなさん、こんにちは。
本サイトでは、主に日本語学校の運営や事務的な業務(ビザ関連、入管関連、生活指導等)について、情報を発信していますが、日本語教員に関する情報発信はあまりしていませんでした。
なぜなら、私自身10年以上の業界キャリア(役職含め)があるにも関わらず、日本語教員は全く経験してこなかったので、発信出来る程の確たる情報がなかったからです。
ただ、そんな私の中で最近大きな変化がありました。今まで日本語学校事務全般の業務経験しかありませんでしたが、ようやく日本語教員として教壇に立つようになりました。
日本語教師養成講座は10年以上前に取得していたので、幾度もチャンスはあったのですが、事務員としてのやりがいを強く感じていたので、教員の道には進みませんでした。
今までは教員の方々の経験談や苦労話を聞いて何となく日本語教師の仕事をイメージしていましたが、いざ自分がやってみると本当に大変な仕事である事が改めて身に染みて分かりました。
今回は、これから日本語教師を目指す方や日本語学校事務職の方に向けて、事務職上がりの私が実際に現場で感じたこと、日本語教師という仕事の奥深さをご紹介したいと思います。
日本人なら誰でも出来るなんて考えは捨てる

これから日本語教師を目指す方は、日本人なんだから誰でも簡単に教えられるはず!なんて考えは一切持たないでください。もし、その様な考えでいるなら、日本語教師の仕事には就かない方がいいです。
まず私たち日本人は当然日本語が話せます。ただ、これから日本語を学ぶ外国人に日本語を日本語で教えるとなると、どうでしょうか?
当然、外国人は日本人ではありませんから普通に日本語で教えても理解できません。また、ごく一部を除き、日本国内にある日本語学校は直説法で日本語を教えています。
ではここで重要な事は何か?
それは、日本語を日本語で教える為には、まず自分自身が日本語を分析、理解した上で、学習者の既習語彙や文法のみを使って教えなければならないことです。
文法や文型等の分析、授業準備に相当な時間を要する
日本語を母語とする私たち日本人は、日本語を教える為の訓練を受けていません。何が言いたいかと言うと、日本語学習中の留学生が分かるように、日本語で文型や文法や語彙等を教えるにはテクニックが必要なのです。
テクニックを得るには、まず日本語の文型や文法を分析し、その意味を自分の中で理解しなければなりません。自分自身が分かっていなければ、留学生に教えることはできません。
この分析作業が非常に大変で時間がかかります。様々な文法、文型等の解説本を見ても最終的に自分自身の中でシックリ来ない事も多く、特に私なんかはその典型で分析だけで2時間使ってしまうことも…
時間かかりすぎじゃない?と思うかもしれませんが、私にはこれでも足りないくらいと思えるくらいです。読者の方も、いつか教壇に立てばきっと分かると思います。
各種資料作りも大変(教案、パワポスライド、プリントetc•••)
日本語文法の分析が終わった!で終わりではありません。分析は最初のステップであり、次に各種資料を作らなければなりません。担当する課や学校方針によって異なりますが、最低限以下の準備が必要です。
- 教案
- パワーポイントスライド(授業でパワポを使用する場合)
- プリント(自作の場合)
- フラッシュカードなどの教材
なんだこれだけか!と思われるかもしれませんが、一つ一つの準備に膨大な時間がかかります。分析の後にこれらの準備をするので、トータルで相当な準備時間となります。
初級レベルの授業準備が特に大変!未習語彙、文型は使えない
上述した教案とは、その日の授業でやる事や時間の割り振り、重要事項をプリントにまとめたものです。
教案の書式は人それぞれで、プリントにまとめたり、携帯やタブレットに書いたり、教科書に書いたりとやり方は異なります。教案を作らない先生も多くいますが、経験の浅い教員にとっては非常に重要なものです。
特に初級者は知らない語彙や文型が山の様にあります。彼らが未習の語彙や文型をうっかり使用してしまうと…???先生、わかりません!とツッコミが来ます。学生も理解できません。
だからこそ、当日気をつけるべき事や既習語彙や文型をまとめておいたり、予め導入する内容やセリフを書いておく事が非常に重要です。私自身もうっかり未習語彙を言ってしまうことも多々ありました。本当に教えるのは大変です…
常勤になると授業準備は家でやる事が多い

非常勤講師とは違い、常勤講師(正社員)になると授業以外の業務がたくさんあります。学校の方針にもよりますが、主に以下の様な業務です。
- 授業スケジュール作成
- 進路指導
- 学生指導、学生対応
- 課外活動や入学式、卒業式イベント対応
- テスト作成、準備
- 成績評価、テスト採点
- クラス替え
- 非常勤講師サポート、シフト管理
- 入管報告(教員登録など)
これらの業務をやっているてあっという間に1日が終わってしまい、勤務中に授業準備をする時間が捻出できません。ですので多くの先生が自宅で授業準備をすることになります。
当然ながら自宅で授業準備をするとプライベートの時間は削られます。私もそうでしたが、常勤講師になったら、こればかりは避けて通れません。
正直に言えば、あまり良い表現ではないのですが、趣味=日本語教師の感覚でいないと、常勤講師はメンタル面で非常にタフな状況に陥いる可能性が高いです。
初めて教壇に立った時に感じたこと

初めて教壇に立った時は緊張しました。準備してきた事、セリフも飛びまくり、時間配分も予定通り進まず、脇汗、冷や汗かきまくりでした。
準備は万全にしてきたのですが、学生から思いがけない質問がきたり、私が担当していなかった課の質問がきたり等、当日は想定外の事が起きまくり、平常を装うので精一杯の状態でした。
色々あったけど、楽しかった
脇汗、冷や汗をかきまくりましたが、授業の中で少しずつ修正していけました。半分は学生に救われた様な気がしますが、最終的には授業を楽しめたかなと思います。
楽しかったけど、これが毎週続くのかという気持ち
上述した準備時間の事も踏まえると、これが毎週続くのはシンドイし大変だなぁと改めて感じました。今まで事務側にいた私にとって改めて教員の大変さが身に染みました。
後述しますが、事務員側から教員の苦労は中々実感しにくいものです。私も教員の方々からの苦労話を聞いていたので大変なのは知っていましたが、実際に自分が教員をやると聞いていた話以上に大変でした。
正直、これを毎週続けられるかな?と思えるくらい大変でした。たくさん授業を経験すれば教案や教材の蓄えも増えていきますが、そこに至るまでの道のりが長く遠いと感じました。
事務員も教員を経験した方が良い
実は日本語学校では、事務部と教務部が揉めたり、歪みあったりして、双方のコミニケーションが無くなってしまう事がよくあります。
事務部側からすると、どうして教務部は動いてくれない?どうしていつも否定ばかり?と首を傾げる事案がよく発生します。
しかし、教務部からすると日頃の授業や授業準備に加えて、進路指導やスケジュール管理、テスト作成等の業務がある中で、そんな事言われても無理!というのが本音です。
この様に双方間の隔たりや軋轢が増していくと組織が機能不全になってしまいます。そうならない為にも、私は出来る事務員には日本語教員を経験してもらいたいなと感じています。
教員をやらなければ、教員の苦労はわかりません。
ただ、教員をやるには、日本語教師養成講座の修了又は日本語教育能力検定の合格が必要になります。また、これからは登録日本語教員の資格も取らなければなりません。
色々と面倒ではありますが、事務員が教員をやって損する事は絶対にありません。チャンスがあれば、ぜひトライしてみてください。
最後に、これから日本語教師を目指す方へ

これから日本語教師を目指す方にとって不安な事もたくさんあると思います。私も日本語教師養成講座を受講してる時、正直自分には合ってないかなと思い、講座修了後日本語教師にはなりませんでした。
しかし、心の中に迷いがあり、せっかく講座を受講したのに教師をやらなくて良いのか?一度でも良いから教壇に立った方が良いのでは?と想い続けてきました。
確かに向き不向きはあるかもしれません。不安もあるかもしれません。でも、その気持ちも大事ですが、ぜひ一度教壇に立ってみてはいかがでしょうか。
色々と大変なことばかりですが、日本語教師を目指したい方には、必ず志すキッカケがあると思います。そのキッカケを大事に、是非日本語教師にチャレンジしてみてください。
