皆さん、こんにちは。
日本語教育に関心がある方々にとって、日本語学校の仕事と言うと、先ず思い浮かぶ事は日本語教師ではないでしょうか。
しかし、日本語学校の仕事は教師だけではありません。今回は日本語学校の縁の下の力持ち、事務員の仕事についてご紹介します。
日本語学校事務員の仕事内容
日本語学校の事務員の仕事は多岐に渡ります。各日本語学校の運営方針によって、事務員の業務範囲は異なりますが、多くの学校の事務員は以下の業務を担っているのが一般的です。
留学生の生活サポート及び生活、悩み相談
日本語学校に在籍している留学生の大半が初めての訪日であり、且つ初めての外国です。
今まで生活してきた母国の環境と大きく異なる日本での留学生活において、日本人では考えられないトラブルが多く発生します。それをサポートするのが事務員です。
以下に、実際に学生からよくある相談やお願いの一部を挙げてみました。この様な質問や相談に対処し、留学生が安心して留学生活が送られるようサポートします。
- パスポートを無くしてしまいました。どうすれば良いですか?
- お財布と在留カード、保険証全部無くしてしまいました。どうすれば良いですか?
- 病院に行きたいです。日本語が上手くないので、病院に連れて行ってください。
- 公共料金の払い方が分からない。一緒に来て支払ってくれませんか?
- 郵便再配達の通知が来たが、そもそもこれが何か分かりません。再配達の電話を手伝ってくれませんか?
- アルバイトの面接に行きたいのだけど、日本語が分からないから、店長と話してくれませんか?
- 先生、アルバイトの履歴書が書けません。一緒に見てください。
- 定期券の買い方が分かりません。教えてください。
日本人学生であれば、自分で何とか出来る事も、初めての日本留学で日本語が上手く話せない学生には難しい事ばかりです。
その為、上記の様な質問や相談をしに、学生達は事務所を尋ねて来ます。
しかし、全ての対応を1から10まで丁寧にやってしまうと時間がいくらあっても足りません。学生が自発的に行動出来る様に上手く促しつつサポートする事も事務員の仕事です。
留学生寮の管理
全ての学校が該当するわけではありませんが、学生寮のある日本語学校では、寮管理を事務員が担当している事が多いです。学校によっては、学生寮担当がいる学校もあります。
一般的な学生寮は、1人部屋、2人部屋、4-8人部屋タイプのシェアハウス型等を運営している日本語学校が多いです。
特にシェアハウス型の物件の場合、各備品の取り替えや修繕、見回り、新入生受け入れ準備(ベッドメイク、清掃等)業務が発生します。
また、シェアハウス型の学生寮は建物、設備の摩耗が激しく、あっという間に共有部や居室が汚くなります。
清掃は学生がやらなければなりません。その為、寮見回り時に、学生が掃除をサボっていたら、学生を注意し掃除をするよう指導します。特に母国で掃除をした経験の無い学生は全然掃除をしません…。
学費、寮費の管理、集金
多くの日本語学校では、学生が入学前に初年度学費を一括で納入して貰っています。一部の学校では、入学前に半年分の学費を納入するシステムを採用している所もあります。
翌年の学費は、次年度がスタートする3ヶ月前から請求を始める学校が多いです。ただ、学生がすぐに学費を払うかと言うと、そうではありません。
学生の中には、放置しておくと延々に学費、寮費を滞納してしまう学生もいます。その為、事務員は請求から納入までを管理し、未納者のフォローもしなければなりません。
また、学生は銀行振り込みや手渡しで学費を支払います。その学費の金額を確認し、領収書を発行します。また、学費支払いリスト又は学内システムに支払い完了の☑️を入れます。
単純作業ではありますが、特に支払いが手渡しによる支払いの場合は、事務所内で金銭の授受が発生します。
当然金額の数え間違え、徴収したお金を紛失(金庫への入れ忘れ)が起こる可能性があります。その点を十分注意しながら業務にあたらなければなりません。
入国管理局関連業務(来日前)
留学生として来日する為には、日本国のビザを取得しなければなりません。
留学生の本分は勉強になりますので、ビザの種類は留学ビザとなります。当然、留学ビザが取得出来なければ、入国する事が出来ません(ビザ免除国は、短期滞在なら入国出来ます)。
留学ビザを取得するには、先ず日本語学校の入学時期に合わせて、指定(以下、入管)の期日までにら各地方の入国管理局に指定の書類を提出します(入学予定日から5ヶ月から6ヶ月前)。
この留学ビザを取得する為、入管に指定書類を提出するまでの一連業務を事務員が担当する学校が大半です(一部小規模校は教師が兼任している事も有)。
COE交付〜現地日本大使館査証
入国管理局からの許可は、入学日から遡って約1ヶ月半前に出ます。
許可の証明として、在留資格認定証明書(通称COE)が発行されます。無論申請した全ての在留資格認定証明書が交付されるわけではありません。
事務員は、在留資格認定証明書が発行された入学予定者に対し、初年度納入金の請求(Invoice送付)を行います。後に支払い期限内の振り込みが無い場合は催促もします。
支払いが確認出来たら順次、現地日本大使館の留学ビザ査証に必要な書類を発送します。発送にはEMSやDHL、OCS等の国際郵便を使用します。
日本大使館のビザ査証について
必要書類を受け取った入学予定者は、在留資格認定証明書と指定の書類を携えて、母国にある日本大使館に留学ビザの申請を行います(現地日本大使館留学ビザ査証)。
日本大使館の留学ビザ査証が終わり、無事に留学ビザが交付されれば、残すは日本へ行くだけとなります。無論留学ビザが不許可となる事もあります。
日本語学校の場合、留学ビザは1年3ヶ月か6ヶ月のビザが交付されます。この期間に差が出る理由は以下の通りです。
- 1年3ヶ月のビザは、入国管理局より適正校の認定を得ている日本語学校に入学する入学予定者に対して、発給されます。
- 6ヶ月のビザは、入国管理局より適正校の認定を得ていない日本語学校(非適正校、新規校)に入学する入学予定者に対して、発給されます。
現地日本大使館査証〜入国
現地日本大使館にて、留学ビザを取得した入学予定者に対して、入国日予定日、来日情報をヒアリングし、入学に向けた準備をします。
この際、入国時の空港ピックアップがある日本語学校は、ピックアップに向けた準備(来日情報の取りまとめ、ピックアップボード作成等)も同時に進めます。
空港ピックアップ当日は、空港で入学予定者が中々出てこなかったり、途中落とし物をしたり、予定していた便が大幅に遅延又はキャンセルになる等予期せぬトラブルが頻発しますので、心得ておきましょう。
入学後オリエンテーション
無事に来日し、入学した留学生の多くは初めての日本来日(初めての海外である事も多い)です。その為、入学後すぐに日本生活におけるルールやマナー、入管及び学校の規則等に関わるオリエンテーションを実施します。
このオリエンテーションの担当は事務職員が務める学校が多く、日本語があまり出来ない入学者に対しては英語や中国語等の外国語でオリエンテーションを実施します。
住所登録、口座開設サポート
こちらはサポートしている学校、サポートしていない学校があります。日本人と違い、日本語が上手く話せない、平仮名、カタカナ、漢字が書けない学生にとって、住所登録だけでもハードルがかなり高いのです。
特に口座開設については、銀行口座を悪用した外国人が犯罪を犯す事例も増えており、口座開設も以前の様に即日開設は出来なくなりました。
その為、役所や銀行に事務員が引率し、サポートしてあげる事で留学生も安心して最初のスタートを切る事が出来ます。
在留期間更新(留学ビザ)の更新
上述した通り、入国前に付与される在留期間は1年3月か6か月である為、この期限を迎える前に、留学ビザを更新しなければなりません。期間を超過してしまうと、オーバーステイとなり、強制帰還となります。
在留期間更新申請は、在留期限の3ヶ月前から可能です。申請先は各地方入国管理局となり、申請担当は事務職員である学校が大半です。
更新申請書は全て日本語で書かれている為、留学生が全て間違い無く記入する事は不可能に近いです。その為、申請書の書き方、指導、修正等事務職員がサポートしなければなりません。
留学ビザ更新については別記事でも紹介しておりますので、下記のリンクから確認してみてください。
生活指導
留学生の中には、学校を休みがちになってしまい出席率が下がってしまう学生、授業態度の悪い学生、近隣住民からクレームを受ける等の学生がいます。
そういった学生に対し、しっかりと指導するのも事務職員の仕事です。学校によっては教員が担当する場合もあります。特に日本語がまだ上手くない学生には、簡単な日本語と英語で説明する機会も多くあります。
留学生の多くは18-25歳前後で、まだままだ子どもです。色々分からない事や日本語でのコミニュケーションが上手くいかず、誤解が発生したりと色々な事がおきます。
そんな中でも、時に厳しく、時に学生の良き理解者である事が事務職員に求められます。闇雲に叱って信頼関係が無くなると、心を閉ざしてしまう留学生も多いからです。
最後に
如何でしたか。日本語学校の事務職員の仕事内容が少しイメージ出来たでしょうか。政府が新たに留学生40万人計画を発表し、これからも留学生は増え続ける事が予想されます。
教員と違ってあまりスポットが当たらないかもしれませんが、事務職員は陰から日本語学校を支える縁の下の力持ち的な存在です。
外国人サポートの仕事に関心のある方、語学を活かしたい方にピッタリな仕事でもあります。本記事が多くの方の元に届き、いつか日本語学校事務職員の仕事に多くのスポットが当たる事を願っております。
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