日本語学校にて、人事採用担当を長く務めていると、面接にお越しになる方々から、以下の質問が多く寄せられます。
- 事務員として働く為に、取得しておいた方が良い知識や資格は有りますか?
日本語学校=留学生が勉強している学校という認識がある方は、英語や中国語と言った外国語が必須と思われている方が多いかもしれません。
今回は、私自身の経験を下に、これから日本語学校事務員で働きたいと考えている方に向けて、事務員に必要な資格についてご紹介します。
本当に必要な資格は1つだけ
結論から言うと、日本語学校の事務員に必要な資格は一つしかありません。
- 留学生に対して、真摯に根気強くサポートが出来る
これが必要な資格です。人事採用担当者として、求職者から必要な資格に関する質問を受けた際、必ず上記が必要な資格と回答しています。
真摯に根気強くサポートが出来る力とは?
留学生は日本人ではありません。日本人なら出来る事でも、留学生には出来ない、分からない事がたくさんあります。
そんな彼らだからこそ、真摯に根気強くサポートしていく必要があるのです。
残念ながら、一部の事務員や先生の中には、留学生が出来ない事に苛立ち、高圧的に接する方がいらっしゃいます。気持ちはよく分かるのですが、そんな接し方をしてはいけません。
同じ国の友人が周りに居たとしても、異国の地での生活は孤独を感じたり、勉強についていけなかったり、偏見や差別にあったり、私たちが見えない所で留学生は色々と苦労しています。
そんな彼らが時々問題を起こしたり、嘘を付いてしまったり、伝えた事を忘れてしまったり、出席率が著しく下がったりと、日本語学校では色々な事が起こり、事務員を悩ませる事が多々あります。
そんな彼らの状況やバックグラウンドを理解した上で、ただの指導ではなく、根気強く真摯にサポートを続ける事で、彼ら自身の行動や考え方にも少しずつ変化が表れ、少しずつ成長していきます。
だからこそ、日本語学校の事務員には、留学生を真摯に根気強くサポートが出来る力が必要な資格なのです。
有れば活かせる資格
次に有れば活かせる資格を紹介します。私の10年間の日本語学校事務員キャリアの中で実際に役立った資格、有れば役立つと感じた資格を以下にご紹介します。
学生サポート編
学生サポートにおいて、主に活かせる資格は以下の通りです。
- 日本語教師養成講座420時間修了
- TOEIC, TOFUL, IELTS,英検
- 中国語検定、HSK,
- 実用ベトナム語試験、国際ベトナム語能力試験
- ミャンマー語検定
- シンハラ語検定
外国語の資格
外国語の資格に関しては、英語、中国語、ベトナム語、ミャンマー語、シンハラ語の試験合格証明書を挙げたのには理由があります。
日本語学校に在籍する留学生で、特に多い国籍が中国、ベトナム、ミャンマー、スリランカ、英語圏(ネパールを含む)です。どの日本語学校にも一定数在籍者がいます。
そんな彼らが困っている時、悩みを相談したい時、母国語でサポートが出来たらより効果的で効率的な問題解決が期待出来ます。
また、オリエンテーションや各種説明会の配布資料の翻訳(日⇆外国語)を作成する機会も多くありますので、外国語の資格を活かす事が出来ます。
日本語教師養成講座
特に学生サポートにおいて、日本語教師養成講座で学ぶ[語彙コントロール]が大いに役立ちます。
語彙コントロールとは、その留学生が既習済みの日本語語彙のみを使用して会話をする(使用する語彙をコントロールする)事を意味します。
英語や母国語での説明が最も効果的ですが、簡単な語彙表現で伝える事で、留学生が理解出来る事もたくさんあります。
特に留学生の日本語能力向上の為にも、可能な限り日本語で伝え、日本語で理解出来る様に導く事も大切です。
経理•総務編
- 簿記
- マイクロソフトスペシャリスト(MOS)
- ITパスポート
主に上記の資格が挙げられます。何故これらの資格が有ったら役に立つかと言うと、業務効率化、健全な運営体制の維持における貢献が期待出来るからです。
ある程度規模がある日本語学校では、経理課、総務課がありますが、特段の業務区分が無い学校も多くあります。その場合、留学生対応をしつつ経理も総務もこなさなければなりません。
また、ITパスポートやMOSといった資格は、各業務のICT化やペーパレス化を進める事で、経費削減にも繋げる事が出来る事から、有れば大いに役立つ資格と言えます。
学生寮管理編
日本語学校の中には、留学生専用の学生寮がある学校も多くあります。学生寮管理においては、以下の資格が挙げられます。
- 宅建
- マンション管理士
- 賃貸住宅メンテナンス主任者
日本人学生寮とは違い、留学生は節約の為に自炊する子が多いです。その為、キッチン汚れやキッチンの配管が油塗れになったりと管理が非常に大変です。
その為、管理、メンテナンス関連の資格は大いに役立ちます。また不動産とのやり取りも多くあるので、宅建の資格も活かすことができます。
運営•経営編
日本語学校の役職者になると学校の経営、労務関連等の運営に必要な知識が求められてきます。
- 社労士
- FP(ファイナンシャルプランナー)
- 行政書士
社労士とFPを挙げた理由は、より効率的に、より効果的な経営を目指す為に役立ちからです。
特に日本語学校の収入は、留学生の収める学費や寮費しかありません。非常に限られた収入源の中で、適切な人数で、効率良く運営をしならないからこそ、これら2つの資格が活かせます。
また、行政書士を挙げた理由としては、新規校のオープンを考えている学校の経営陣にとって、入管や文化庁(日本語学校認定校申請)を始めとした行政機関とのやり取りは必須です。
行政機関とのやり取り、各種行政書類作成、法務関連業務において大いに役立つのが行政書士の資格です。私自身も行政書士資格取得を目指し、勉強しています。
最後に
如何でしたか。日本語学校の事務員になりたい方はぜひ、留学生に対して、真摯に根気強くサポートする事が必要な資格である事を頭に入れておいてください。
世の中には様々な資格がありますが、真摯に根気強くサポートする事は、気持ちと心構えさえあれば誰でも出来ます。しかし、これが意外と難しいのです。
ある意味で、留学生サポートは、自分の子どもを育てる様な感覚に近いとも言えます。子どもは中々親が思った通りには育たないですよね。だからこそ、親は根気強く子どもの成長をサポートするものです。
留学生も同じです。頭の良い子もいれば、何度言っても出来ない、やらない子もいます(笑)。そんな彼らの成長をサポートし、時には良き相談役となり、時にはしっかり指導するのが事務員の仕事てす。
また、今日本語学校の事務をされている方は色々と辛い事も多いと思います。私自身も色々苦労しましたので、よく分かります。
そんな時は今一度、真摯に根気強くというん想いで留学生をサポートしてあげてください。
いつの日か、事務員としてサポートした子が母国に戻って起業したり、有名企業の社長になったり、政治家になるかもしれません。
本当にそうなったら、彼らはきっと日本と繋がりを持ち続けてくれるでしょうし、日本と母国の架け橋になってくれるはずです。
これこそ、日本語学校が真に果たす事の出来る日本社会への貢献です。色々と大変な仕事ですが、本記事が少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
コメント